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無職のゆらぎ

音楽、映画、本、お笑い、アイドル、その他いろいろ

虚像と実像のお話。

WACKがまた公開オーディションをやっている。

WACKというのは元祖お騒がせアイドルBiSが所属する会社でもあり、BiSの仕掛け人渡辺淳之介の会社だ。そんなWACKが新人のオーディションと評し、女の子たちの5泊6日の合宿生活をニコ生で配信しながらWACKに所属する新人アイドルを選出するというもの。

 

ちなみに去年にも同じような形で公開オーディションは行われた。

BiSが結成当初から目標に掲げてきた武道館公演、過激なパフォーマンスなどで武道館側の許可が降りなかったため「BiSなりの武道館」として横浜アリーナ解散ライブを行った彼女たちは解散した。しかし、渡辺淳之介のもう一度BiSがやりたいという願いから、初期から中心メンバーのプー・ルイだけを残し新たにメンバーをこの公開オーディションで選出した。

 

その模様は映画にもなっている。

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「BiS誕生の詩」は硬派にその公開オーディションを追ったもの。

「WHO KiLLED IDOL?」はそのオーディションでBiSになれなかった女の子たちのドキュメンタリーである。

 

東京での公開から一ヶ月あまりたった今月上旬、地方で2作連続での公開が相次ぎ、

私も地元神戸で鑑賞することにした。が、時間の都合上「WHO KiLLED IDOL?」の方しか見ることができなかった。なんとなく「こっちの方が面白いやろ」と前々から思っていたので、「BiS誕生の詩」を見れなかったことになんの後悔もなくこちらの「WHO KiLLED IDOL?」のチケットだけ購入した。

 

そんな中見始めたこの映画だったが、冒頭で映し出される合宿中にプー・ルイが語る言葉に後頭部を殴られたような気持ちになる。

「みんな人の不幸が好き」

その通りだと思った。多分私が「BiS誕生の詩」を見れなくてもいいや、と思ったのもそういうことなんだろう。知らず知らずのうちBiSになれなかった方の彼女たちの、いわば敗者の物語を期待していた。

 

いつしかアイドルは努力してきた結果を見せるものではなく、その努力の過程を見せるものになったとAKB48が台頭してきた2010年前後からよく言われるようになってきた気がする。

48は好きだ。なんならアイドルにハマったきっかけは48だ。

特に2010年頭にやっていた「マジすか学園」をきっかけにAKBにハマり倒した私はその年の秋に結成されたNMB48という沼にずぶずぶとハマっていくこととなる。2011年元日から始まったNMB48劇場での劇場公演は今では飛ぶ鳥を落とす勢いの山本彩なんかも毎日劇場で歌って踊っていた。劇場公演が始まって3ヵ月くらいは本当に毎日やっていた。なので1ヵ月も経つと体調不良でアイドルたちがバタバタと倒れていくのだ。無理もない、つい数カ月前まで普通の中学生や高校生だった女の子たちがレッスンに明け暮れ毎日約2時間の公演をこなす。それに全員が公演に出れるわけではない。中心メンバーが取材やテレビの仕事で公演に穴を開けるたび控えメンバーにまわってくるチャンス。まさにサバイバル。当時学生の私はそれこそ毎日のように専用サイトからチケット抽選に応募し、1月から5月ごろまで続いた当時の演目「誰かのために」公演が終了するまでに7、8回見に行けた(ほぼ毎日応募してこの抽選確率なのだから、倍率は恐ろしいことになってたんじゃないだろうか。これ以後ますます劇場公演には入れなくなった)。48の劇場公演の演目は決まっている。15曲ほどの公演曲で構成されていてセットリストの曲が変わることもなければ、順番すら変わらない。同じ演目を何回も見に行ったのはアイドルたちの成長が感じれるからだ。「あの子、前より踊れるようになってる」、そういった体験が楽しかった。

 

「自分がなぜアイドルが好きなのか。それは動物園で動物を見てる感覚と一緒。だってお前ら檻の中で飼いならされてるトラとかライオンを見るために金払ってわー可愛いとか言ってるやん。あいつら動物はただ生きてるだけやのに、それを見世物にされてる。同じように女の子が頑張ってる姿を金を払って見る。アイドルも人生のショーケースやから」

飲み会でそう言って周りをドン引きさせた経験もある。やっぱり、アイドルは人生のショーケースだと思う。

 

話を映画に戻すと、BiSになれなかった女の子たちはBiSの公式ライバルとしてSiSを結成する。プロデュースをするのはBiSの仕掛け人渡辺淳之介ではなく、渡辺の同期入社でBiSに関わり続けてきた清水という男。しかしこの清水の不祥事が原因でSiSというアイドルグループはお披露目ライブの翌日に解散させられる。という、プー・ルイの言う人の不幸が凝縮されたようなドキュメンタリーだった。

映画が終わったあと館内清掃のために劇場内に入ってきた、知り合いの映画館スタッフと目が合い、「なんなんすか、これめちゃくちゃおもしろいじゃないですか」「でしょ?」と言葉を交わす。もはや凄惨なまでのアイドルの地獄絵図を見せられても最初に出てくる言葉が「おもしろい」だとは。

 

先日新宿タワレコでGANG PARADEというWACK所属のアイドルのインストアイベントに行ってみた。現在のGANG PARADEには元SiSのメンバーがいる(このへんの詳しい事情は映画を見てもらった方がわかりやすい)。大人の事情に翻弄された女の子たちが笑顔で、全力で歌って踊っていた。アイドルという世界の末恐ろしさを感じて背筋に寒気がした。

 

でも不思議とステージ上で歌って踊るアイドルたちの笑顔に嘘はないような気がする。

涙を飲んだ彼女たちの笑顔は一層輝いて見えた。

 

だから人の不幸っておもしろいんですよ。