無職のゆらぎ

音楽、映画、本、お笑い、アイドル、その他いろいろ

200キロの土嚢

ADという仕事を辞めて3ヶ月。

 

仕事を辞める1ヶ月前くらいに「マジでお笑いでも見に行かねーと笑いかたを忘れそうだ!!」と勇気を出して一人でお笑いを見に行き始めたのだが、最近ではすっかりお笑いライブが生活の中心ですか?と言わんばかりである。

(ちなみに笑い方を忘れそうになったのは忘れもしない日本列島を大寒波に包まれた1月、ロケで名古屋に行き一人でJAFの車をひたすら追っかけ事故を探したあの日である)

 

仕事を辞めた後、「何が一番辛かった?」と聞かれることがよくあるのだが、それは決まってる。忘れもしない去年7月。フランスのニースで花火大会の客にトラックが突っ込むとうテロが起きた一週間だ。

 

私はその週、放送予定の再現ドラマの準備をしていた。だがそのテロが起きたせいでその週の再現ドラマの放送は見送りになった。私の担当していた番組は情報番組で1時間の放送時間に取り扱うネタ(事件だったり、いいお話の再現ドラマ)ごとにディレクターとADが振り分けられ、チームで1週間ごと仕事をする。

再現ドラマが見送りになったせいで私の仕事はなくなり、改めてチームに配属されることになる。直感的に「テロのチームにつけられると絶対やばい!だって頭おかしいディレクターしかいねーもん!」と思った。当時ちょうど東京都知事選の真っ只中で都知事選チームは変わらず動いていた。政治ネタはADのできる仕事が限られてる。局内の報道部に映像素材を借りに行ったり、ディレクターが行った専門家やらのインタビューを文字起こしする程度、楽だ。私はチーフADに「都知事選行きますわー!研修の局員いっぱいいるしそっちの方サポートする人間もいるでしょ?私が行きます」と率先して逃げた。

 

逃げた後にテロチームは大変なことになっていた。ディレクターが「人間の重さくらいあるマネキンをトラックで轢くみたいな検証実験やりたいよね〜」とか言い出したらしくてんやわんや。まずマネキンを借りに行かなければならない、人間の重さをどうするか、トラックはどこから借りてくる?、トラックをマネキンで轢く場所は?等々ディレクターの一言で準備しなければならないのはうちらAD。そしてロケの日程は次の日、出ないと放送に間に合わない。テロチームのADが頭抱えてるのを尻目に「早く逃げてよかった〜」という私はほくそ笑む。

 

その日の夕方、私は楽に仕事をこなし、喫煙所でサボってると2期上の先輩から突然電話がかかってくる嫌な予感しかしない。チームの直属の先輩ならまだしも、この先輩はニースのテロチームの先輩だ。

私「はい」

先輩「あ、ごめん。今大丈夫?」

私「あー、大丈夫ですよ」

先輩「ニースのやつ、明日ロケでさー。お願いがあって」

私「なんですか?」

先輩「人がいなくて、どうしてもお前に行って欲しいんやけど」

私「は?人いるでしょ、〇〇とか〇〇とか(同期2人)」

先輩「いや、その子らはロケ慣れしてないし大変なロケになりそうやから。〇〇(一期上の先輩)は行くんやけど、そいつがお前じゃないと行かないってキレてるから」

私「・・・私が行くしかないと」

先輩「うん」

 

逃亡失敗。ロケで求められるADの仕事はデスクワークしかやってないADでは無理だと言うのはわかってる。番組に入って4ヶ月程度だったが、毎週のようにロケ行く、ロケ要員だった私だからお声がかかるのはよくわかる。だから逃げたのに!!!

そこから直接電話くれた先輩と話しロケの準備がどこまで進んでるかを聞く。トラック、場所、マネキンは確保できたらしい。だが重り問題がまだ解決してない、と。

 

私「実際買ってきてつけてみないとわかんないですけど、マネキンの前と後ろにリュックかなんかを背負わせてその中に、砂入れるとかでいけるんじゃないですか?」

先輩「それいいね!買ってきて!」

 

そこから近くのWEGOでやっすいリュックを6個くらい買って、ホームセンターへ向かう。一気に轢くマネキンは4、5体らしいので単純計算で50キロ×4体=200キロの重りがいる。20キロ×10の土嚢を見たことないようなホームセンターのでかい台車に乗せ局へ帰る。

 

帰ると一期上の先輩が木材でマネキンを支える台みたいなのを作っていた。リュックを背負わせるだけだとマネキンが重みで倒れてしまうからだ。買い出しから帰ってきても仕事は山積み。ロケに行く2人で朝まで作業した。もちろん寝る暇なんてない。

そして6時、マネキン12体と200キロの砂を乗せた車で山梨まで向かう。

山梨のある駐車場が今回のロケにあたり場所を提供してくれた。

 

アスファルトの照り返しも手伝って気が遠くなりそうな炎天下。必死にマネキンに20キロと30キロの土嚢が入ったリュックを背負わせる。暑い。暑さと土嚢の重み、寝てない。最悪のコンボ。先輩、あまりのストレスに思わずロケの合間に「ああああ!!!」と叫ぶ。「もうちょっと頑張りましょう、もうちょっとで帰れますから」とフラフラしながら言う私。間違いなく共闘関係。

トラックに追突され吹っ飛ぶマネキン。

 

宙を舞うマネキンを見ながらこう思った「多分これお蔵入りだ・・・」。

撮れたVを見ていうディレクター「これショックング映像すぎて放送できないな〜」

笑い事じゃねーよ、お前の一言のためにここまで頑張ってきたんだよ。

 

こんなこともあろうかと準備していたダンボールに50キロの重りを入れてトラックを追突させる衝撃実験の方がその日のオンエアに乗り、マネキンの方は完全にお蔵入りになった。

 

山梨からの帰りに「このまま200キロの土嚢を局内に持って帰ってもどうしようもないんですよねー」と運転手さんと話す。「僕の会社に空き地みたいなとこがあるからそこなら捨ててもいいよ」と言ってくれた。運転手さんの会社がある豊洲に行き、200キロの砂をばらまいた。これがのちの豊洲の盛り土問題である。あ、嘘です。

 

 

ADの仕事でキツイのは正解がないことだと思う。

どんな無茶振りにも耐え、自分で解決策を導き出さないと

放送が成立しない。

 

今この話が私の鉄板の飲み会ネタになっている。

それはそれで良かったかな。

 

 

 

 

 

いや、よくねーよ。